くしゃみ大好き!

くしゃみにとらわれたある男の半生を綴る

一生の宝物となるCM

 それは中学2年生の夏休み。テレビを何気なしに見てたらある風邪薬CMが流れました。「後藤散」と言われると、あまり知らない方のほうが多いと思うのですが、自分が住んでいる地元では、昔からCMをやっている有名な製薬会社のブランドというか、そんな類の医薬品があります。その中の「後藤散風邪薬」のCMが流れたんです。どんな医薬品CMも毎年リニューアルして公開されてますが。後藤散風邪薬のCMもその流れでその年のバージョンが公開されたんです。

 

 衝撃を受けました。

 

 風邪薬のCMといえば、役者さんがCMの中でくしゃみするのはよくあることだと思います。そんな演技くしゃみでも当時は食い入るように見てたのですが、このCMでされているのは、どうみても演技のくしゃみではなかったのです。そもそも演技とそうでないのって見ただけで区別できるの?という話がありますが、区別できます!演技だとどうしても典型的な発音である「ハックション!」とか「クシュン!」というわざとらしいものになってしまいます。もちろんそんなくしゃみをする方もいますが、表情やしぐさまでリアルに再現はできません。このCMでは声だけでなく、表情などまさにリアルそのものでした。しかも女子高生の顔のアップで何人もくしゃみを披露するという、くしゃみ好きにはこれ以上何を望むものがあるかという神CMだったのです。いったいどんな方法でくしゃみしていたのか?コショウか紙縒りか分かりませんが、想像することしかできません。

 私はすぐさま今の時間とチャンネルをメモしました。夏休みだったので次のタイミングは翌日すぐきました。その時間帯になるとCMに入ってビデオを録画してはCM開けると止めること繰り返し、ひたすらそのCMが放送されるのを待ったのです。そしてついにCMを録画することに成功しました。これがそのときのCMです。

 https://www.youtube.com/watch?v=CJq8LB8ujaM

 途中でぶった切ってしまい、画像も変なノイズが入ってすみません。ぶっちゃけいうと、良いタイミングで停止ボタンを押してずっと止めてたらテープが痛んだようでノイズありまくりの動画になってしまいました。20年前以上の動画なので仕方ないのですが。

 後期になると別のバージョンが公開されました。それがこちら。

 https://www.youtube.com/watch?v=iAHnr9Mk7IM

 

 ちなみに、後藤散の風邪薬は翌年はまったく別物になりました。毎年欠かさずチェックしていきましたが、女性がくしゃみする類のCMはこれ以降作られることはなかったのです。当時、インターネットはなく、当然youtubeのような誰でも見れる動画サービスがない時代。人間のリアルなくしゃみを自由に見ることはできませんでした。このCMはその貴重な動画として私の一生の宝物になったのです。

くしゃみ観察(中学校編1)

中学校で思い出に残ってるくしゃみです。

この頃はそれなりに記憶が明確で、印象的なくしゃみの子に何人も出会いました。

  • 1年生のときにクラスが一緒だったIさん。授業中にくしゃみを連発する子ですぐに気になった。くしゃみのタイプは乾いたくしゃみで大きさは普通。「フゥウッフン!」と一回出たら3~4連発してた。学校の定期検診で鼻炎の子は何か特別に連絡があってたので、その子が鼻炎持ちの子だと分かった。くしゃみの声は普通だったけど、特に好きだったのが、呼入期のときに小さな鼻の穴がプクーと膨らむところ。鼻炎持ちの子らしく人前でくしゃみするのに慣れているのかときどき手で顔を抑えず無防備なくしゃみの表情を何度も見せてくれた。鼻の穴を開いてくれたタイプの中でも3人に入るベストなくしゃみだった。
  • この子も同じクラスのOさん。立派で大きな、でも形の整った鼻をしている綺麗な子だった。冬の日はその大きな鼻がはっきりと赤くなってそれがまた可愛かった。でもくしゃみはどちらかといえばあまりしてくれなかったと思う。朝雨が降ったあるテストの最中、びしょぬれになって風邪ぎみなのか鼻をしきりにすすっていた。そして「ハックシィィッ!」と特大の湿ったタイプのくしゃみをしてくれた。1年間同じクラスで、まれにその特大くしゃみを聞くことができた。ある冬の日の朝。学校に来て椅子に座ってるその子が「ハックシュン!」と大きなくしゃみ。鼻水が出ててそれもまた可愛かった。
  • 入学当初隣の席だったNさん。綺麗な鼻筋をしていて可愛かった。この子は3年間一緒のクラスだったので何回もくしゃみを見ていた。くしゃみは平凡で「フッウッフン!」という乾いたくしゃみ。ただ、鼻が少し悪いのか結構頻繁にくしゃみをしていたと思う。忘れられないのは、隣の席に座っているその子をふと見たとき、横顔が切ない顔になってて、そのままくしゃみをしてくれた。あの表情はなんか強く思い出に残ってるなぁ。
  • 学校以外での出来事。古本屋で立ち読みしていると「ひっくしゅん!ひっくしゅん!」というはっきりと喋る感じのくしゃみが聞こえてきた。圧縮期のときに出る声としては「ハッ!」か「ヘッ!」が多く、「ヒッ!」と発音する人は珍しい。またくしゃみ出ないかなと観察していると本屋から出て行った。ちょっと興味が出てきてそのままフワーとついていくとまたすぐ近くの本屋さんへ。自分はその人の顔が横目で見れる位置について、またくしゃみしてくれないかとまじまじ見ていた。普通はこんな状況で二度とくしゃみは出ないのだけれども、なんとまたくしゃみをしてくれた。「ひっクション!ひっクション」。今度は顔をちゃんと見れて幸せで得した気分になりました。

自分で出せた!

 以前のブログで書いたとおり、小学校時代はどうやって自分でくしゃみを出せるかに情熱を注いだ。しょっちゅうくしゃみをしている友人をうらやましく思っては、いろんな方法を試したがなかなか出ない。

 羽か何かで鼻先をくすぐるけど全然出ない。コショウを吸ってみるけどこれも鼻が痛くなるだけであまり出ない(ただ、ムズムズ感はあって、ときどきだがくしゃみが出たことはある。)。なんか児童向けの漫画で滝に打たれてた女性がくしゃみが止まらなくなるのを読んで、自分も試してみようと冷水を浴びたりしたけど当然出ない。子供心ながらに考えては試す日々が続いた。

 ある日のこと。自分の家で天井にぶら下がっている照明を低い位置でつけたり消したりするのにビニールのひもで延長している照明があった。くしゃみをするためにそのビニールのひもを自分の鼻の穴の中に入れたのだ。いままでは鼻先をくすぐるだけだったけど、そのときはぐいっと奥に入れてみた。するとくしゃみするときのムズムズ感が来た。これはと思って窓際に行って太陽の方を向いてみた。

 「ハックシィ!」

 出たーーーーーーーーーー!!!

 照明のひもを少し切って、窓際に行って太陽を見ながら、ひもを思いっきり鼻の中に入れてくすぐってみた。

 「ハックシィ!」

 また出たーーーーーーー!!!

 夢にまで見た、自由にくしゃみを出せること。その方法がこのときようやく分かったのだ。自分はその行為を取り憑かれたようにずっとくしゃみを出し続けた。もう嬉しくてたまらないし爽快でたまらない。よくよく試してみると太陽を見ずともくしゃみは出る。そして鏡の前でまじまじと自分のくしゃみを見た。出た瞬間は目を閉じるので当然見ることはできないのだが、出る前の表情は確認できた。このとき、自分はくしゃみが出る前の呼入期で鼻の穴が広がるんだというのが分かった(後で分かるのだが、このタイプはあまり居ない)。自由にくしゃみを出せるようになったが変な副作用があった。それは紙縒りを使用して鼻が慣れてくるのか、通常の生活で全くくしゃみが出なくなった。当然紙縒りを使うと出るので出したいときには困らないし、さらに言えば私生活でくしゃみが出なくて困ることなどないのだが。少し寂しかった。

 何はともかく、この日、ひとつの夢が自分の中で叶った。小さいころから中年になった今までくしゃみに関する欲求を満たすために沢山のことをしてきたけど、これがその最初になったと思う。


P.S. 太陽とくしゃみの関係についてはまた後日別の記事で。